自分の聴覚に多大な影響を与えたレコード (8) Me’Shell Ndegeocello /Peace Beyond Passion

Facebook で回ってきたバトン「自分の『聴覚』に多大な影響を与えたレコード」の補足シリーズその8はミシェル・ンデゲオチェロの『Peace Beyond Passion』です。前回のピアソラのライブ盤でちょっと気合いを入れすぎて力尽きた感があり、実に約7か月ぶりとなってしまいました。今回含めてあと3回、さらっと行きます。

Me’Shell Ndegeocello / Peace Beyond Passion (1996, Marverick)

聴覚刺激ポイント:重いベースと深い声、グルーヴと解放感

1990年代前半から半ばごろ、私の CD 購入の情報源のひとつが週刊 SPA! のディスクレビューでした。毎週結構刺激的なディスクが紹介されていたんですよね。Spank Happy も Mark Ribot も Screaming Headless Torsos も Jazz Passengers もSPA! で知りました。誰が書いていたんだろう。ちゃんとライターの名前を覚えておかなかったのは惜しまれます。

これも SPA! のレビューで知った一枚です。ソウル系なんて当時の自分には一番縁遠かったのですが、ハービー・ハンコック等に認められたベーシストでマドンナのレーベル Marverick からデビューした、という経歴に興味を引かれたんだったかな?彼女の2枚目のアルバムです。

導入のインスト曲 “The Wonb” に続いて

Jeasus cured the blind man so that he could see the evils of the world

The Way より

と、いきなり刺激的なステートメントから始まる “The Way”。タイトなグルーヴ感に加えてコーラス部分での音の広がりがとても気持ち良いのですが、改めて歌詞を読むと 決して気持ち良いだけでは済まない内容だったり。続く曲はアルバム中最もヘビーな “Deuteronomy: Niggerman”。Deuteronomy というのは旧約聖書の「申命記」のことだそうで、それに niggerman をぶつけるというのもかなり強烈です。一方、その後は聴く者を瞑想へと誘うような、比較的遅めのテンポの穏やかな楽曲が続きます。多分それまでの私ならつまらなくなってしまいそうなタイプの曲なのに、不思議と安らぎや解放感を感じて繰り返し聴くようになりました。

全体を通して彼女の低く太い声のラップや語り、それより高い声の歌、とボーカルの印象が非常に強いです。そしてあまり派手さはないけど重く響くベースがやはりすごい。参加メンバーの中ではギターのデイヴィッド・フュージンスキーのプレイが印象的でした。

その後、しばらくはこのアルバム以外にこの人の音楽を聴く機会はなかったのですが、2008年に初めてライブに行き、そこで改めてこの人の凄さにノックアウトされました。以後は来日の際にはなるべく観に行くようにしています。行けば行くほどこの人の魅力にとりつかれてしまいます。

下の映像は最近見つけました。おそらく “Peace Beyond Passion” リリースからそう時間が経っていない時期のものかと思います。

ライブではサポートベーシストを入れて、自身はここぞという時以外はボーカルに専念することの多かった彼女ですが、近年はベースは自分だけという編成が多くなりました。こちらは2018年のスタジオライブです。アカペラで歌われる「無題」に込めたメッセージが重いです。

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