自分の聴覚に多大な影響を与えたレコード (13) ホセ・リベルテーラ / 古典タンゴの魂 (José Libertella / La cumparsita)

Facebook のバトン「自分の『聴覚』に多大な影響を与えたレコード」の補足として書いていたこのシリーズ、11回目以降は日本タンゴ・アカデミー機関誌「Tangueando en Japón」向けに特別延長編として続けています。

今回取り上げるレコードはこちら。

ホセ・リベルテーラ / 古典タンゴの魂
José Libertella / La cumparsita (1974, SWX-7075. VICTOR)

聴覚刺激ポイント:テンポの良い復古調タンゴと快速バンドネオン

以前書いた通り、家にあったレコード『これがタンゴだ 第一集』が私のタンゴの入り口でした。やがて自分でも小遣いをためてレコードを買うようになりましたが、最初はアーティストの名前など全然わからないので『これがタンゴだ』同様の様々なアーティストの曲が入ったオムニバス盤を買って聴き込みました。そのように耳にしたタンゴの中で気に入ったのが、ホセ・リベルテーラの演奏する「ガウチョの嘆き」と「バンドネオンの嘆き」だったのです。そんなわけで、単独のアーティストによるタンゴのレコードを買うと決めたとき、まずはこのレコード選んだのでした。

収録曲とメンバーは以下の通り。邦題はアルバムの表記に準じます。

A面

  1. El esquinazo 街角
  2. Corazón de oro 黄金の心
  3. Organito de la tarde たそがれのオルガニート
  4. Gallo ciego 盲のおんどり
  5. La tablada ラ・タブラーダ
  6. Sentimiento gaucho ガウチョの嘆き

B面

  1. Quejas de Banoneón バンドネオンの嘆き
  2. El porteñito エル・ポルテニート
  3. Re Fa Si レ・ファ・シ
  4. El entrerriano エントレリオ州の男
  5. Una noche de garufa 酒宴の一夜
  6. La cumparsita ラ・クンパルシータ

ホセ・リベルテーラとキンテート・デ・グアルディア・ビエハ

  • ホセ・リベルテーラ (バンドネオン、編曲)
  • オマール・ムルタ (コントラバス)
  • アルトゥーロ・シュネイデル (フルート)
  • アニバル・アリアス (ギター)
  • フアン・ナバーロ* (ギター)

* レコードではカルロス・ノバ―ロと書かれている

いわゆる復古調の小編成楽団で、最高レベルのミュージシャンが昔の雰囲気を生かしつつ高い技巧も駆使して古典タンゴを演奏する、という内容です。ジャケット裏の高場将美さんの解説によれば、リベルテーラは1974年のカルロス・ガルシーアとタンゴ・オールスターズの来日公演でギターとコントラバスを従えて古典タンゴを演奏して大喝采を浴びたそうで (私がタンゴを聴き始める前なので未見)、このアルバムも日本向けに録音されたもののようです。

元々『これがタンゴだ 第一集』でもロベルト・フィルポの四重奏団やフランシスコ・カナロのピリンチョ五重奏団のような快速テンポの古典タンゴが気に入っていたので、このレコードでのリベルテーラの演奏も私の好みにぴったりとはまりました。ピアノやバイオリンがいない編成であることについては初心者ゆえのこだわりのなさから気にならず、むしろギターが刻むリズムがとても心地よく感じられたものです。そして何よりリベルテーラのバンドネオンの技巧の凄さ。多くの曲の終盤に配置されたバリアシオン (変奏) がどれも見事で、特にアルバム終盤の3曲「エントレリオ州の男」「酒宴の一夜」「ラ・クンパルシータ」は子供心ながらに魅了されました。以後しばらくは小編成、速いテンポ、高度な技巧が私の好きなタンゴの一つの傾向となります。副作用としてカルロス・ディ・サルリのような楽団の演奏の良さがわかるようになるまで相当時間がかかってしまいましたが。

今改めて聴いてみると、上に述べた点の他にもさまざまな魅力に溢れた演奏であることがわかります。例えばギターの伴奏の巧みさ。単にコードでリズムを刻んでいるようでいて、要所要所に入るフレーズがアンサンブルに広がりを与えています。2台のギターの役割分担も見事で、コードを弾く音域を変えたり、一方がコードを弾いているともう一方は副旋律を弾いたり、二人でハモったり。フルートはバンドネオンに負けず劣らず技巧的でありながら自然ですし、コントラバスは名手ムルタならではの安定感です。

ちなみにこのアルバムは、1978年にリベルテーラが楽団を率いて来日した際にレコードでは再発されたものの、CD 化はされていません。辛うじて2006年の6枚組オムニバス盤 CD『ベスト・タンゴ100』に「エル・エントレリアーノ」が収録され、また2008年リリースのリベルテーラの未発表音源集 “Tango íntimo” に「レ・ファ・シ」「黄金の心」「酒宴の一夜」の3曲が収録されているのみです。後者はサブスクリプション型音楽配信サービスでも聴けますのでリンクを貼っておきます (いつもは Spotify のリンクを貼っていますが、日本では Spotify を通じて聴けるのは「黄金の心」だけなのでアップルミュージックのリンクを貼ります)。

なおこの時期のリベルテーラにとって、本来の活動の中心はルイス・スタソと共に率いるセステート・マジョールでした。1978年にはそのメンバーを中心とした大編成楽団を率いて上述のように来日しています。そして1983年にはパリで公演が始まったショー「タンゴ・アルヘンティーノ」に参加、以後世界各地を飛び回って活躍しますが、2004年に71歳の若さで亡くなりました。

自分の聴覚に多大な影響を与えたレコード (13) ホセ・リベルテーラ / 古典タンゴの魂 (José Libertella / La cumparsita)” に対して1件のコメントがあります。

  1. yoshimura-s より:

    一部表現を修正しました (内容の趣旨に変更はありません)。

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