ピアソラのグループでの活動で知られるギタリスト、オスカル・ロペス・ルイス氏を悼む

クリスマスに届いた訃報

2021年12月24日、アストル・ピアソラのグループに長年参加していたギタリストのオスカル・ロペス・ルイス氏が亡くなりました。83歳でした。

ピアソラの音楽において彼のギターは非常に重要な役割を担っていたことは間違いありません。また (私自身はほとんど耳にしていませんが) 夫人の歌手ドナ・キャロルとの活動をはじめとしてアルゼンチンのジャズ、ポピュラー音楽界に多大な貢献をしたミュージシャンでもありました。

彼の経歴、功績についてはラティーナの下記の記事に詳しくまとまっているのでご参照ください。

中でも注目したいのはこの点。彼はピアソラのグループにおいて、単に演奏のみに留まらない多くの貢献を行っていたことが伺われます。

ステージ上では静かな方だが、実は和声とかアレンジに、ピアソラからも随分意見を聞かれたそうだし、ステージ裏では世界中の劇場の音響技師たちにピアソラ音楽の理想的な劇場での音作りについて教えてきたように、劇場内のサウンドは彼を中心にまとめられていた。サウンド面でピアソラが一番信頼していた存在だった。

[2021.12]アルゼンチン・ニュース : ピアソラ・キンテートのギタリスト、オスカル・ロペス・ルイス逝く! (ラティーナ編集部)

オスカル・ロペス・ルイスのギタープレイ

そんな彼のピアソラのグループでの演奏から、さまざまなスタイルのギターが聴ける曲をピックアップしてみました。

  1. Revirado レビラード / アストル・ピアソラ五重奏団 (1962年 “Tango para unaciudad” 収録)
  2. Introducción a héroes y tumbas 英雄と墓への序奏 / アストル・ピアソラ新八重奏団 (1963年 “Tango contemporaneo” 収録)
  3. A Bandoneón, guitarra y bajo バンドネオンとギターとベース / アストル・ピアソラ (1964年 “1944-1964 20 años de vanguardia con sus conjuntos” 収録)
  4. En las sombras 影の中で / アストル・ピアソラ (1967年 “La historia del tango / Epoca romantica” 収録)
  5. Coral コラール / アストル・ピアソラ五重奏団 (1969年 “Adiós nonino” 収録) – Spotify で表示されている曲名は誤りで、この曲のタイトルである Coral とアルバム内で次に続く組曲のタイトル Tangata (Silfo y Ondina) がくっついてしまっている
  6. Buenos Aires hora cero ブエノスアイレス午前零時 / アストル・ピアソラとコンフント・ヌエベ (1972年 “Música popular contemporánea de la ciudad de Buenos Aires vol.2” 収録)
  7. Movimiento continuo 連続運動 / アストル・ピアソラ五重奏団 (1979年 “Biyuya” 収録)
  8. Tangata タンガータ / アストル・ピアソラ五重奏団 (1982年 “Live in Tokyo 1982” 収録) – 5で誤記のあった “Tangata” で、本来は組曲の第3部 “Final” だが後年このパートだけ単独で “Tangata” と呼ばれるようになった

1、2はアンサンブルの中でギターが非常に重要な要素となっている作品。1はテーマの背後で動き回るこのギターがなくては成り立たないですよね。2はベースの三度上を動くギターが不穏な雰囲気を掻き立てます。

3はタイトル通り三つの楽器をフィーチャー。ギターはバックにソロにと大活躍です。

4、5、8はギターソロがフィーチャーされています。5はシンプルなメロディーを味わい深く演奏。ここまではほぼピアソラの書いた譜面通りのはずですが、4のソロの後半と8のソロは無伴奏で、ロペス・ルイス自身のアイディア (即興)によるソロかもしれません (もっともピアソラは、ゲイリー・バートンとの共演ですらソロパートまできっちり譜面を書いていたそうなので何とも言えませんが)。静謐で凛とした雰囲気の、コードストロークやアルペジオを多用した和声的なアプローチが際立つソロかと思います。

6、7は彼のもうひとつの特徴であるコードカッティングが重要な役割を担う曲。16ビートを刻むギターが6の後半では妖しくもクールな雰囲気を、7では焼き切れそうな激しさを曲に与えています。

映像でも演奏する姿を観てみましょう。誤って Noneto electrónico と書かれていますが、6と同じコンフント・ヌエベ (九重奏団)の1972年コロン劇場でのライブで「アディオス・ノニーノ」です。アントニオ・アグリ(vn)、ホセ・ブラガート(vc) に続いてロペス・ルイスがソロを取ります。かなりひどい音質だけどすごい演奏です。時々オーバーラップするのは後年のピアソラの顔で、どうやらテレビ番組の中で過去の自分の映像を見ているようです。

こちらは1984年のベネズエラのテレビ局の映像で「ムムキ」。曲の冒頭にロペス・ルイスのギターソロがフィーチャーされています。後年のアルバム “Tango: Zero Hour” に収録された際のギターはオラシオ・マルビチーノでしたが、本来ピアソラはロペス・ルイスを想定してこのパートを書いたのかもしれません。

最後に夫人のドナ・キャロルとの共演を。こちらは2013年に “Academia porteña del lunfardo” (ブエノスアイレス・ルンファルドアカデミー、かな?) で行われたライブでの「スマイル」。彼はピアノを弾いています。かなりアグレッシブなコード進行に聴こえます (よく歌えるなあ)。

こちらは詳細不明ですが2011年にアップされた映像。自動演奏と思われるバックトラックとギターと歌で “The lady is a trump” です。

ドナ・キャロルも昨年3月に亡くなったのだそうです。仲睦まじかった二人は今ごろあちらで再会していることでしょう。

ご冥福をお祈りします。

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