Spotify で聴くエドゥアルド・ロビーラ (1)

10月に放送された Viaje de Tango 第7回 エドゥアルド・ロビーラ の準備を進めるなかで、ロビーラの音源が意外に Spotify に上がっていること、そして一部ちょっと探しにくい状況にあることに気付きました。そこで、多くの人にロビーラの音楽を迷わず聴いてもらえるよう、Spotify 上で聴けるロビーラの音源をまとめてみることにしました。きちんと全部まとめてから公開しようとするといつになるかわからないので、ちょっとずつこまめに出して行こうと思っています。

ロビーラについては日本語での資料が非常に少ないのですが、幸いなことに手元にある雑誌『アンボス・ムンドス』第4号 (2000年) には「ロビーラ&ニチェーレ ポスト・ピアソラ2」(山本幸洋、斎藤充正、西村秀人、石川浩司、渡部晋也、鈴木一哉)という特集があり、彼の全アルバムの解説とアルバム未収録の音源リストが掲載されています。先日の放送も本記事も、この特集なくしてはまとめることは不可能でした。20年以上も前にロビーラについて詳細にまとめてくださった執筆者の方々には改めて感謝致します。

アルフレド・デル・リオ=エドゥアルド・ロビーラ楽団の録音集

ロビーラがその個性を前面に押し出した音楽活動を行うのは1960年代に入ってからですが、1950年代にも優れた録音を残しています。ずっと入手難だと思っていたこの時期の録音が、いつの間にか Spotify で聴けるようになっていたのですね。CD でのリリースは確認できなかったので、サブスクのみのリリースかもしれません。

1~6は歌手アルフレド・デル・リオとロビーラの連名の楽団によるもので1957年録音、そして7、8はロビーラ楽団によるもので1958年録音です (歌手はホセ・ベロンとホルヘ・イダルゴ)。アンボス・ムンドスの記事に掲載された両楽団の録音は全て網羅されています。アストル・ピアソラの作品1と、フアン・デ・ディオス・フィリベルト作の有名な古典タンゴ5は器楽曲です。9はボーナストラック的な位置付けでしょうか。ロビーラも参加していたオスバルド・マンシの楽団によるロビーラの作品の演奏で、1959年録音。マンシはピアソラ五重奏団にも参加したり (名盤『レジーナ劇場のアストル・ピアソラ』のピアノが彼)、オスバルド・プグリエーセの楽団でプグリエーセが演奏できない時に代理でピアノを弾いたりしたこともある名ピアニストで、この後紹介するロビーラのアルバム “Tango Vanguardia” にも参加しています。

エドゥアルド・ロビーラと現代タンゴ集団のファーストアルバムの抜粋+α

1960年にロビーラは、それまで編曲を提供していた《ラ・プラタ八重奏団》のメンバーをほぼ引き継ぐ形で《Eduardo Rovira y su agrupación de tango moderno エドゥアルド・ロビーラと現代タンゴ集団》を結成します。メンバーは以下の通り。

  • bn エドゥアルド・ロビーラ
  • vn レイナルド・ニチェーレ、エルネスト・シトン、エクトル・G・オヘーダ
  • va マリオ・ラリ
  • vc エンリケ・ラノー
  • cb フェルナンド・ロマーノ
  • pf レオポルド・R・ソリア

1961年に彼等の最初のアルバム “Tango en una nueva dimensión” が録音され、その12曲中8曲が2006年に CD “A Evaristo Cariego” に収録されました。下の音源はその配信版。

該当曲は4~11に収録されており、ロビーラの自作曲は4、7、9です。デル・リオ=ロビーラ楽団の録音と比べると変化は明らかで、まさに新たな次元 nueva dimensión へと飛躍したロビーラの音楽を聴くことができます。

ちなみに1~3は1966年にバンドネオン、ギター、ベースのトリオで録音され、当時 EP としてリリースされたもの (今後の回で改めて取り上げます)。それに引っ張られたのか Spotify 上のアーティスト名が “Trio Rovira” になっており、”Eduardo Rovira” で探しても見つけられないというワナがかけられています。

トリオによるアルバム未収録の埋もれてしまいかねない貴重な録音が含まれることはとてもありがたいのですが、その分肝心の “Tango en una nueva dimensión” 収録曲がカットされてしまったことは残念です。CD の収録時間的には余裕ですから全部入れちゃえばよかったのに。

…と思っていたら、カットされたうちの1曲が思わぬところに潜んでいました。

ダリエンソ、デ・アンジェリスからピアソラまで、よく言えば幅広く、悪く言えば無定見に集められたタンゴの数々。ラスト2曲にマランド楽団の「オレ・グァパ」とピアソラ五重奏団の「アディオス・ノニーノ」が並ぶあたりはシュールですらあります。そんな中、3曲目に収められているピアソラ作「メランコリコ・ブエノスアイレス」が “Tango en una nueva dimensión” に収録されていて上記音源ではカットされたものなのです。ちなみに9もロビーラですが、これは次回紹介予定の “Tango Buenos Aires” の中の1曲です。

それにしてもどういう意図で誰が編集したアルバムなんでしょうね。とても謎ですが、結果として聴けなかった曲が聴けた訳ですから感謝しておきましょう。

以上、まずはアルバム2つ分をご紹介しました。しばらく地道に続けますのでよろしくお願いします。

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