Spotify で聴くエドゥアルド・ロビーラ (3)

なんと前回から3か月も間が開いてしまいました。すみません!今回は予告通りトリオ編成での録音を取り上げます。と言っても実は Spotify に上がっているアルバムは少ないです。残念ながら。

これまでと同様『アンボス・ムンドス』第4号 (2000年、インパクト出版会) の「ロビーラ&ニチェーレ ポスト・ピアソラ2」(山本幸洋、斎藤充正、西村秀人、石川浩司、渡部晋也、鈴木一哉) を参考にしました。

トリオ編成での最初のアルバム “Tango en la universidad”

ロビーラは1965年に、それまでの室内楽的な編成からバンドネオン、ギター、ベースというトリオ編成へと活動形態を移行します。これはそのトリオ編成での最初のアルバムで、1966年にリリースされました。『アンボス・ムンドス』の記事の時点では復刻されていませんでしたが、その後 CD 化され (IRCO/UNL 700) 現在はその音源が配信にも使われています。グループ名は《Trío Eduardo Rovira》で、配信では《Trío Rovira》となっています。メンバーは以下の通り。

  • bn エドゥアルド・ロビーラ
  • g ロドルフォ・アルチョウロン
  • b フェルナンド・ロマーノ
  • oboe (ゲスト) ペドロ・コッチアラーロ (3, 5)

ひんやりとして人を寄せ付けないような雰囲気さえ感じさせる一方、聴けば聴くほど離れがたくなる魅力を持った作品です。1, 3, 4, 5, 6がロビーラの自作。この中で5はオスバルド・プグリエーセ楽団の演奏で非常に有名になった曲ですが、ドラマチックなプグリエーセ楽団のバージョンをイメージして聴くとちょっと肩透かしを食らうかもしれません。でもこの雰囲気こそがロビーラの心象風景だったのでしょう。じわじわと心に染み入ります。2はこのグループのギタリストのアルチョウロン、7はピアソラとの共演等でも知られるピアニストのオスバルド・タランティーノ、8は H・ビターレの作品。7はかなり原曲から離れていて言われないと気づかないほどです。

この音源、貴重な復刻ではあるのですが、残念なことに音質がとても不自然なものになってしまっています。ノイズをカットする処理をやり過ぎたのかも。個人的には、先日このレコードのアナログ盤を入手できる機会があったのに、この音質のことを忘れていて「CD で持ってるからいいや」と見逃してしまったのが悔やまれます。

EP としてリリースされた音源を収録した “A Evaristo Cariego”

前々回紹介した音源の再登場です。説明を省略した1~3がトリオでの録音で、『アンボス・ムンドス』の記事によれば1966年に EP としてリリースされたもの。上の “Tango en la universidad” と同じ頃に CD 化 (IRCO/UNL 701) されたものが配信に乗っています。メンバーも変わらず以下の通りです。

  • bn エドゥアルド・ロビーラ
  • g ロドルフォ・アルチョウロン
  • b フェルナンド・ロマーノ

グループ名も “Tango en la universidad” と同様にクレジットされていますが、『アンボス・ムンドス』の記事によればこの音源では《Eduardo Rovira y su nueva agrupación de tango moderno (エドゥアルド・ロビーラと新現代タンゴ集団)》と名乗っていたようです。

曲は3曲ともロビーラの作品で、”A xxx” (xxx に捧ぐ) というタイトルになっています。xxx に入る人名は、1曲目は既出のエバリスト・カリエーゴ、2曲目はロベルト・アルルト、3曲目はルイス・ルチ。いずれもアルゼンチンの詩人もしくは小説家で、おそらく三部作という意図を持って書かれたものではないかと思います。”Tango en la universidad” の方が先だったとしてその時点で構想があったのかはわかりませんが。

こちらの音源は音質的にも不自然さはなく、安心して聴けます。

トリオ編成でのロビーラの録音で Spotify で聴けるものは、私が知る限り以上です。他にもう一枚1968年録音の “Sonico” というアルバムがあり、またこの後しばらくのブランクを経て1975年には四重奏で “Que lo paren” というアルバムを録音していていずれも CD にもなっているのですが、Spotify では配信されていません。

次回はこのシリーズの最終回。ロビーラの盟友レイナルド・ニチェーレのリーダー作にロビーラが参加したものを紹介しようと思います。

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