無料で GPU が使える Paperspace Gradient について調べてみた

はじめに

今回はちょっとだけ本業に近い領域のことを書いてみます。

GPU で機械学習のコードを動かしたい時、個人ユーザーにとっては Google Colaboratory (長いので以下 Google Colab) が最も有力な開発環境かと思います。何と言っても無料で使えるのが大きいですよね。最近私もプライベートでは時々お世話になっています。ただ無料でサービスを継続するためにいくつか制限・制約があるのがちょっと厄介なところ。特に予期せぬタイミングで GPU の使用制限に引っかかることがあるのは結構困ります。先日もいきなり「あなたはしばらく GPU 使えませーん」と言われて焦りました (GPU 使用制限についての公式の説明もご覧ください)。

そこで、Google Colab に代わるものはないのか?無料で GPU が使える等という虫の良い要求は Google 以外には満たせないのか?という疑問をほかならぬ Google 検索にぶつけてみたところ、何やらそれらしきものが…

早速さわってみました。なかなか良さげです。でもほとんど日本語での情報がない…。という訳で、私なりにわかったことをまとめてみようと思います。上記サイトには Paperspace の名前がほとんど出てこないのですが (サイトの一番下に Gradient – A Paperspace product とあるぐらい) 巷では Paperspace Gradient で通っているようなので以下そのように表記します。今回はそもそも Paperspace Gradient とは何なのかについて、そして近日中に公開予定の次回では実際の使い方について書きます。

Paperspace? Gradient?

まずは Paperspace。会社の名前ですが、私は全く知りませんでした。

Company / About を見ると以下のように書いてあります。

Hello, we’re Paperspace

Paperspace is the cloud platform built for the future. Tens of thousands of individuals, startups and enterprises use Paperspace to power a range of next-generation applications.

Paperspace – Company / About

クラウドプラットフォームの会社なんですね。インフラは自前なのかな。拠点はシリコンバレーじゃなくてニューヨークのブルックリン。まだ新しいスタートアップ企業ながら、有力どころからしっかり出資を得てインテルや NVIDIA とのパートナーシップも結んでいるようです。

この会社の提供するサービスの一つが Gradient です。機械学習のためのプラットフォームで、単に Notebook でコードを動かせるだけでなく、ワークフローによるタスクの自動化やデプロイをサポートする機能も持っているようです。GPU を使った実サービスを立ち上げたいと考えているような人にとっては、最初の実験・検討から最終的なデプロイまでがシームレスにつながるのは魅力的かもしれません (Notebook 以外は触ってみたわけではないので使い勝手はわかりませんが)。

無料で何ができるの?

とりあえず無料で何ができるか、有料だとどうなのか、という点については Pricing のページを確認してみるのがよさそうです。

また無料インスタンスでの制約事項についてはこちらにまとまっています。

注意が必要なのは、アカウントの種別としての課金とリソースの使用料は別だということで、例えば無料プランのアカウントで登録しつつ一部の上位の GPU を従量課金で使用することも可能です。

Google Colab との比較については下記の記事も参考になりますが、一部上の公式情報と合っていない点もあるようなので、記事公開後 Gradient 側に変更があったのかもしれません。

本記事執筆時 (2021/09/26) の最新情報を確認しつつ、無料でできることをざっとまとめると以下の通りです。

  • 使える GPU は NVIDIA M4000
    • それほど高いパフォーマンスのものではないが、Google Colab のようにどの GPU が割り当てられるかわからないということはない
  • インスタンスの連続稼働時間は6時間まで、一度に動かせる Notebook は一つのみ
    • Google Colab のように無操作90分で切られたり予期せぬ使用制限に引っかかったりすることはないが、提供可能数は限られているため利用可能になるまで待たされることはあるらしい
  • 5GB の永続的ストレージが利用可能
  • 作成した Notebook は公開される

どの GPU が使えるかはっきりしている点と、無操作で切られたりしないところは良いと思います。ストレージは 5GB だと用途によっては厳しいですね。大量の画像データや動画データを扱うのが難しいのはイメージできると思いますが、他に学習の過程でモデルのスナップショットを保存したりする際にも気を付ける必要があります。Notebook が公開される点についても、例えばコンペへの応募のためのコーディングを考えているような場合は要注意です (コンペが終わるまでコードの公開を禁止するような例もあるようです)。

以上のように、それなりに制約は大きいです。とはいえ学習や実験等の用途では十分使用に耐えうるのではないかと思います。Google Colab 以外の選択肢があること自体非常に有意義ですし、将来的にワークフローやデプロイにシームレスにつながる点も用途によっては大きなメリットになるかもしれません。

まとめ

無料で GPU を使える環境 Paperspace Gradient について調べてみたところ、無料の範囲ではそれなりに制約は大きいものの、学習や実験の用途では十分使用に耐えうる環境であることがわかりました。

次回は実際にこのサービスを使うための手順、使ってみた感想などを公開したいと思います。

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