梅井美咲 The Awoken Creatures.:*+ (2025/10/23 東京・恵比寿 BLUE NOTE PLACE)
梅井美咲はSpotifyでたまたま聴いて即ファンになってしまったミュージシャン。彼女のBLUE NOTE PLACEでの公演に行ってきた。共演はドラムスの海老原颯。

Spotifyで聴いた楽曲からたどり着いたアルバム “Asleep Above Creatures” は目下の彼女の新作。アコースティックなものもエレクトリックなものもあり、インストもボーカルもあり、ジャズもクラシックもロックもあり、とものすごくいろいろな要素が詰め込まれていて、聴いていて次は何が出てくるのかわくわくしてしまうような作品である。
一方今回のライブは “The Awoken Creatures.:*+” と題されている。今回の公演だけでなく、今後予定されているピアノリサイタルも同じタイトルでやるようだ。眠っていたものが動き出すような予感。”.:*+”は何だろ?
ライブはドラムスとのデュオでスタート。1曲ごとにピアノとシンセを行ったり来たり。曲と曲はシームレスにつながり、曲間とかMCとかなし。最初の曲はアルバム2曲目の「ラウラ」だったか。あとはジャズ、サンバ、プログレ、等々やはりいろいろな要素が盛り込まれる。梅井と海老原がお互いを完全に信頼していなければ無理だろうと思うような冒険も随所に。時間にして40分ほど演奏したところでようやく音が途切れ、梅井が喋る。レコ発的なライブだけどアルバムの再現にはしたくない、というようなメッセージ。一旦海老原が退場。
ここからしばらく梅井ソロパート。ここまで全く聞かせてこなかった自身の歌声を、ここでは大きくフィーチャー。「Innerjade」から始まり何曲か、打ち込み、サンプリングとリアルタイムのシンセの演奏の重ね合わせでコラージュ的な音作りがなされ、そこに澄んだ歌声が重なる。はかなげでありつつはっとするような言葉も紡がれる。リズムが強い局面も増え、ポリリズム、変拍子に加えて完全に非同期なリズムパターンが重なったり。中盤でアルペジオ主体に展開された曲はどんどん激しくなり、本人は髪を振り乱しながら演奏。こちらも没頭していたが、ふと客席を見回してみんな座って聴いていることに不思議さを覚える。これ、クラブでかかったらみんな踊るでしょ (とクラブなんか行ったことのないオヤジが思う)。意外に不協和音の響きやノイジーな音は少なく、音の重なり方としてはきれいな印象。そのかわり時間軸方向がかなりめまぐるしい。リズムそのものも激しいけど、時間軸方向に切り取ったり貼り付けたりする感じ、まさにコラージュ。そこからクールダウンしたと思ったらアコースティックギターまで飛び出す。ほんと何が出てくるかわからない。このパートの締めくくりはフィッシュマンズのカバー「いかれたBaby」。
終盤は再び海老原とのデュオ。まずはピアノで「Stepping Outside」。この日一番ジャズっぽかったか。続いてピアノで7拍子の曲。その次が、個人的に一番聴きたかった「Loops」。アルバムではアコースティックなトリオにゲストボーカリストのハイトーンのスキャットとメタリックなディストーションギターが交錯して強烈なインパクトを残す曲だが、ここではシンセとドラムスで。ディストーションギターのメタリックな感触はないかわりに、より緩急を強調して場面の転換を見せていたように感じた。ピアノでもう一曲、アンコールにシンセで7拍子の曲を一曲やって終了。
途中の海老原の出入り以外は曲が途切れることなく、ひたすらぶっ続けで演奏された120分以上のステージ。身体から音が溢れ出てくるというか、身体そのものが音でできているというか、とにかくものすごいものを観て聴いた、という体験。
ちなみにローリングストーン・ジャパンのインタビューも興味深い。
梅井美咲 The Awoken Creatures.:*+
日時:2025年10月23日 (木) 19:30~
場所:東京・恵比寿 BLUE NOTE PLACE
出演者:
曲目:わかったものだけ
- ラウラ
- Innerjade
- いかれたbaby
- Stepping Outside
- Loops
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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