キケ・シネシ&岩川光 (2025/05/09 東京・要町 GGサロン)
アルゼンチンのギタリスト、キケ・シネシとケーナ奏者の岩川光のデュオのコンサートに行ってきた。
実は2023年3月にもこのデュオのコンサートを同じ場所で聴いている。
この時新曲だった曲を含む楽曲はその後録音されて “semilla de luz” というアルバムになり、今年まず配信でリリースされた。今回CDとしてもリリースされたが、配信版はトータル81分もあるのでCDには収まりきらず、一部の曲は削られている (そのかわり配信よりはるかに高音質)。今回のコンサートはこのアルバムのリリースと、デュオ結成15周年となることを記念して行われた。

二人の音楽には、土の香りや風の音を感じる素朴なフォルクローレの要素と、変態的なフレージングや超絶技巧を駆使したアヴァンギャルドな要素がシームレスにつながり共存している。この印象自体は前回も書いたが、一方で今回は前回よりさらに親密感、一体感が増し、より美しさの方向に振れた内容だったようにも感じた。
印象に残ったのは、キケが語ったトニーニョ・オルタとの邂逅のエピソードとともに演奏された「クエカ・パラ・トニーニョ」、岩川が師と仰ぐホルヘ・クンボに捧げた「クンベアンド」、アルゼンチンで1976年の軍事クーデターが起きた日を指す「ある3月24日」など。「クンベアンド」は、ケーナ2本同時吹きに始まり即興でタンゴの「エル・チョクロ」のフレーズまで織り込むなど、師のケーナに対するコンテンポラリーでアヴァンギャルドなアプローチに敬意を表してその方向に振り切った演奏がすさまじくも清々しい。一方「ある3月24日」は、2020年のこの日に岩川がブエノスアイレスで書いた曲。例年大規模なデモが行われるところパンデミックによるロックダウン下でデモは行われなかったものの、夜8時に人々が一斉に窓を開けて鍋などを打ち鳴らして「我々は忘れない」ということをアピールしたのだそうだ。沈鬱で物憂い曲想に想いがこもる。
キケの代表曲「2つの太陽」でいったん締め括った後、アンコールでは、キケがそれまでずっと弾いていた7弦ギターをチャランゴに持ち替えて演奏。その響きの美しさにたくさんの幸福を得た。
キケ・シネシ&岩川光
日時:2025年5月9日 (金) 19:00~ (実際は20分ほど開演が遅れた)
場所:東京・要町 GGサロン
出演者:
- Quique Sinesi キケ・シネシ (7-str. g, charango)
- 岩川光 (quena, quenacho)
曲目:
- Vidala de la lluvia 雨のビダーラ (Quique Sinesi)
- Huayñito azul 青のワイニョ (岩川光) – Alta paz アルタ・パス (Quique Sinesi)
- Cueca para Toninho クエカ・パラ・トニーニョ(Quique Sinesi)
- Cumbeando クンベアンド (岩川光)
- Cada vez que siento tu amor 君の愛を感じるときはいつも (Quique Sinesi)
- Brisa verde 緑のそよ風 (岩川光)
- Un 24 de marzo ある3月24日 (岩川光)
- Una señal ウナ・セニャール (Quique Sinesi)
- Primaverar プリマベラール (岩川光)
- Dos soles 2つの太陽 (Quique Sinesi)
- (アンコール) ? (曲名アナウンスがなく不明)
下はアルバム “semilla de luz” の裏面。当日二人からサインをもらった。
曲目を見ると、今回のコンサートは最後を除いてこのCDの曲順通りだったことがわかる。

同アルバムの配信版。
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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