Sexteto Primavera (2026/03/12 東京・銀座クラシックホール)
これはすごかった!若きピアニスト守田春菜が率いるTrío Primaveraの拡大版、Sexteto Primavera (セステート・プリマベーラ) のコンサート。会場は銀座ライオンビルの6階、銀座クラシックホール。歴史と風格を感じさせる空間は、普段は宴会場として使われている広間である。

今回のコンサート、第一部はコントラバスの田中伸司が以前からやりたかったという《セステート・タンゴ》のレパートリーの再現。セステート・タンゴはオスバルド・ルジェロ、ビクトル・ラバジェン (bn)、エミリオ・バルカルセ、オスカル・エレーロ (vn)、フリアン・プラサ (pf)、アルシーデス・ロッシ (cb)、ホルヘ・マシエル (vo) が1968年にオスバルド・プグリエーセ楽団から独立して結成した楽団である。全員が強い個性を持ち、プグリエーセの重厚なスタイルを引き継ぎつつ独特のアクセントを持つリズム、複雑なアレンジ、圧倒的な演奏力で人気を博した。私も大好きなグループの一つである。
ちなみに彼らが1987年に来日した際に、私はものすごく楽しみにして聴きに行ったのだが、おそらくは興行上の理由からダリエンソやカナロのスタイルでの演奏がプログラムのかなりの部分を占めていて、これだけの個性派軍団に何をさせるのか!と当時かなり憤った記憶がある。ちょうどタンゴ・アルヘンティーノ (アルゼンチーノ) の日本公演が行われた年で、にわかに日本にタンゴブームが巻き起こっていたことの影響だろう。こんなことが起きるならタンゴブームなんていらない!と思ったりもしたものだ (でもタンゴブームじゃなかったら彼らの来日もなかったかもしれないので、まあ何とも…)。話がそれたが、そんな思い出のあるセステート・タンゴの本来のスタイルの演奏を生で聴く機会が訪れるとは、何という幸いだろう。
実際の演奏は単なる再現を超え、メンバー全員が本気でこの音楽に取り組んだことが否応なしに伝わる演奏だった。専光秀紀、吉田篤のバイオリンソロの受け渡しや池田辰則、北村聡の2台のバンドネオンの絡み合うフレーズには何度もゾクゾクした。そもそもあの込み入ったアレンジの譜面を守田が全て採譜したことが驚異的だ。ようやく1987年のもやもやが晴れた気がする。
第二部は会場後方にダンスのスペースを設けたライブ・ミロンガ。最初に2曲、いつものトリオ・プリマベーラ (守田、専光、田中) の演奏があり、その後はカルロス・ディ・サルリやオスバルド・プグリエーセのスタイルで多くのダンス愛好家たちを踊らせた (私はいつものように聴く専)。個人的にはディ・サルリのスタイルが何とも染み入るものがあった。なお、2曲ずつのタンダ (曲のセット) で間にコルティナ (タンダの区切りを示すための別ジャンルの曲) が挿し挟まれたが、座って聴いている者としてはコルティナに若干違和感を感じたのが正直なところ。MCを入れるとかではだめなのかなあ…。
歌手はベテランの西澤守。元ネタではホルヘ・マシエルが歌っていた曲が何曲かあったが、マシエルとは異なるスタイルで、味わい深く心に染みる歌声だった。
Sexteto Primavera
日時:2026年3月12日(木)
場所:東京・銀座クラシックホール
出演者:Sexteto Primavera
曲目:
【第一部】
- El choclo – エル・チョクロ (Ángel Villoldo)
- Taconeando – タコネアンド (M: Pedro Maffia, L: José Horacio Staffolani)
- A fuego lento – とろ火で (Horacio Salgán)
- Sensiblero – センシブレーロ (Julián Plaza)
- Rawson – ラウソン (M: Eduardo Arolas, L: Gabriel Clausi)
- La última copa – 最後の盃 (M: Francisco Canaro, L: Juan Andrés Caruso)*
- Quejas de bandoneón – バンドネオンの嘆き (Juan de Dios Filiberto)
- Adiós Bardi – アディオス・バルディ (Osvaldo Pugliese)
【第二部】2、4、7はその場では曲名が思い出せず、ヒントだけメモして後から確認したのだが、若干心もとない。また5、6はわからなかった。
- Chiqué – チケ (Ricardo Luis Brignolo)+
- Gigoló – ジゴロ (M/L: Alberto De Caro, Emilio De Caro)+
- El día que me quieras – 想いの届く日 (M: Carlos Gardel, L: Alfredo Le Pera)*
- Un lamento – ウン・ラメント (M: Graciano De Leone, L: Pedro Numa Córdoba)
- (バルス、曲名わからず)
- (ミロンガ、曲名わからず)
- Cara sucia – カラ・スシア (Francisco Canaro)
- Tinta verde – 緑のインク (Agustín Bardi)
- Si sos brujo – シ・ソス・ブルーホ (Emilio Balcarce)
- El pañuelito – 白いスカーフ (M: Juan de Dios Filiberto, L: Gabino Coria Peñaloza)*
【アンコール】
- La tablada – ラ・タブラーダ Francisco Canaro)
- Caminito – カミニート (M: Juan de Dios Filiberto, L: Gabino Coria Peñaloza)*
+: Trío Primavera (守田、専光、田中)
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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