吉田篤貴 Emo Strings (2025/09/08 東京・永福町 sonorium)
吉田篤貴の演奏は以前から三枝伸太郎Orquesta de la Esperanza、挟間美帆m_unitなど様々な場所で耳にしてきたのだが、彼の率いるEmo Stringsを聴くのは今回のコンサートが初めて。参加作品・ライブでのプレイぶりから多分好きなタイプの音楽だろうと予想していたが、ぴったり予想通りだった。
フルメンバーのEmo Stringsはバイオリン4、ビオラ2、チェロ2、コントラバスの9人編成。編成だけ見るとクラシックの室内楽合奏団のようだが、演奏する曲はほとんどがリーダー吉田の作品。しかもその曲がノリの良いリズミカルな曲だったり変拍子バリバリだったりで、随所に挿し挟まれるアドリブはほとんどのメンバーがフィーチャーされる。合奏になれば9人編成ならではの厚みのある音が押し寄せる。
ちょうど新アルバムの録音を行っているところだそうで、そこに収められる予定の楽曲が今回のプログラムの中心だった。自身の子供の喃語 (赤ちゃんが意味のある言葉を話すようになる前段階で発する言葉) からインスピレーションを得た『喃語組曲』からの楽曲が面白い (下に挙げた曲目の第一部3、第二部2, 3がそれに該当)。あくまで喃語は曲のモチーフなので、子供っぽかったりメルヘンチックな優しい曲だったりするわけではなく、例えば「apopokapokepi」はバイオリンがカッティングでリズムを作るジャズファンクっぽい曲調で滅法かっこいい。そのカッティングからは、作るリズムこそ違えどもタンゴのカルロス・ディ・サルリ楽団のスタカートのような切れ味を感じたりもした。一方この日唯一の他者の作品として演奏された三枝伸太郎作「Our “Happy Ending”」は、曲の大半を合奏で押して来る。コロナ禍の中で作られた作品だけに、一筋縄ではたどり着けないハッピー・エンディング。第一部ラストのここが一番空気が重かったかな?
とにかく、弦の響きの魅力に溢れたコンサートだった。一度は生で聴くべきだし、一度聴いたらまた行きたくなる。

ちなみに新アルバム制作支援のクラウドファンディングも実施中。生で聴くべきとは言ったものの、多忙なメンバーゆえライブを聴く機会は限られそうなので、ぜひ最高のアルバムを作ってもらって手元に置いておきたいところ。賛同される方はぜひご支援を!
吉田篤貴 Emo Strings
日時:2025年9月8日(月) 19:00~
場所:東京・永福町 sonorium
出演者:吉田篤貴 Emo Strings
曲目:第一部5を除いて吉田篤貴作曲
【第一部】
- The Wind Fiddler
- Escape
- abuju
- Dancing Spoon *
- Sour “Happy Ending” (三枝伸太郎 委嘱作品)
【第二部】
- Hydra
- mi-tia, mi-goa **
- apopokapokepi
- noboru ** +
【アンコール】
- Casa Nostalgia
アンコールで演奏された「Casa Nostalgia」の映像 (2019年のもの)
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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