BEAT (2025/09/01 東京・日本武道館)

BEATは、私が高校生から大学生の頃にリアルタイムで聴きまくっていた1980年代のキング・クリムゾンの楽曲を演奏するグループ。そのBEATのコンサートに行ってきた。場所は日本武道館。

いやー武道館、何年振りだろ。このブログやSNSへの投稿を調べた限りでは、2011年のTOTO以来みたい。たいへんお久しぶりでございます。

BEATのメンバーは80年代クリムゾンに在籍していたエイドリアン・ブリュー (g)、トニー・レヴィン (b, stick) と、スーパーギタリストのスティーヴ・ヴァイ、TOOLのドラマーのダニー・ケアリー。結成にあたっては、キング・クリムゾンの総帥ロバート・フリップの全面的な協力があったという。これは期待せずにはいられない。

実際素晴らしかった。曲に対して余計なアレンジは皆無。でも全然懐メロじゃなくて、どの曲も新鮮。そもそも80年代クリムゾンの楽曲が時代を先取りしていた…というより時代を超越しているんだと思う。改めて聴くと意外にポップな曲も多い。

一方で、オリジナルメンバーが2人も参加しているとはいえ、クリムゾンのコンサートとは空気感が違う。クリムゾンにおいては、ロバート・フリップはステージでも端の方で椅子に座って黙々とギターを弾いていた。スポットライトが当たることも避けていたのではないかな (比喩ではなく照明のスポットライトね)。MCもしないし。ストイックでミステリアス、ギタープレイは正確無比でちょっと偏執狂的。一方のエイドリアン・ブリューはいつも笑顔でノリノリで、フリップとは好対照だったが、それが独特のバランスをもたらしていた。BEATにおいてはそんなフリップがおらず、かわりにスーパーギタリストとしての華があるスティーヴ・ヴァイがいる。かくしてクリムゾン独特のバランスは崩れるが、代わりにもたらされたのは明るく自由な空気。

また、バンドの中で唯一ヴァイのソロだけが、ブルースをルーツとするロックの成分を持った演奏だったと思う。そのためか、彼のソロからはある種の「普通さ」が感じられた。テクニック的には人間離れしていてエキセントリックなフレージングも織り交ぜられているにも関わらず。

正直なところ、最初はそれらに若干の違和感があったのは事実。でもこれは良し悪しではないんだよね。このメンバーでこの音楽をやるというのはこういうことなのだ。ブリューはボーカルも変態ギターも絶好調。レヴィンのスティックはベースの役割に加えて3人目のギターかキーボードのような響きを創り出す。何より偏執狂フリップが緻密に組み立てたギター2台とスティックのポリリズミックな絡みがきっちりと再構築され、ケアリーの正確で重いドラムがそれを支える。そしてそこに自由な風が吹く。最高の音楽体験ではないか。

楽曲としては「The Sheltering Sky」が印象に残った。元々地味な印象の楽曲だが、ここでのヴァイのギターは圧巻。

席がかなり右寄りだったのでケアリーの姿は見えないが、ステージはこんな感じ。照明も美しかった。

BEAT

日時:2025年9月1日(月) 19:00~

場所:東京・日本武道館

出演者:BEAT

曲目:久しぶりに記憶力の限界に挑戦してみたけど、今調べたらソニーミュージックのライブレポートにも挙がってた (一応全問正解できた模様)

【第一部】

  1. Neurotica
  2. Neal and Jack and Me
  3. Heart Beat
  4. Sartori in Tangier
  5. Model Man
  6. Dig Me
  7. Man with an Open Heart
  8. Industry
  9. Larks’ Tongues in Aspic, Pt. 3

【第二部】

  1. Waiting Man
  2. The Sheltering Sky
  3. Sleepless
  4. Frame by Frame
  5. Matte Kudasai
  6. Elephant Talk
  7. Three of a Perfect Pair
  8. Indiscipline
  9. Thela Hun Ginjeet

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