パブロ・シーグレル 2台ピアノ六重奏 東京公演 (2025/08/27 江東区文化センター・ホール)

アストル・ピアソラ五重奏団の最後のピアニストであり、独自の「ジャズ・タンゴ」を追求するグラミー賞受賞アーティスト、パブロ・シーグレルの東京公演に行ってきた。今回の公演は2011年以来続けてきた日本人アーティストとのアンサンブルに加え、もう一人のピアニスト、志和雅恵が参加する《2台ピアノ六重奏》によるもの。ブエノスアイレスで現地ミュージシャンにより実現したフォーマットの貴重な再現である。

第一部、第二部とも最初にピアノ・デュオ、その後フルメンバーという構成。演奏されたのはシーグレルとピアソラの作品で、並べて聴くと両者の相違点、類似点が際立つ。タンゴにおいてはシーグレル作品の方がより都会的でクールな印象。一方カーニバルの音楽であるムルガ (「夜明けのムルガ」) や速いテンポのミロンガ (「石蹴り遊び」「ミロンガをもう一度」) は、ピアソラが自身の作品にはほとんど採用しなかったリズムで、明るく親しみやすい。ほとんどの曲で挿し挟まれる即興パートと、基本的に小節の頭がかなり突っ込み気味になる (でも走らない) シーグレル独特のタイム感によって、緊張感とスピード感がもたらされた。

2台ピアノに関しては、特に第二部1曲目の「ミロンゲータ」が素晴らしかった。シーグレルの力強さと厚みに対して志和のきらびやかな響き、という印象。アンサンブルの中での2台ピアノの効果についても、確かに全体の響きがより豊かさを増していた。ただ、今回座った席は前から4列目とかなり前方だったのだが、もう少し後ろの席の方がもっと立体感を感じられたかもしれない。

それにしても、シーグレルが即興でぐいぐいとメンバーを引っ張りながら創り出す音楽の何と若々しいことか。御年80歳、歩く姿はさすがにちょっと老いを感じるものの、まだまだエネルギーに満ちている。来年もまた彼の音楽を聴けることを楽しみにしている。

終演後、ご挨拶に伺い記念撮影。

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来日前に行ったインタビューもぜひご一読を。

パブロ・シーグレル 2台ピアノ六重奏 東京公演

日時:2025年8月27日(水) 19:00〜

場所:江東区文化センター・ホール

出演者:

曲目:

【第一部】

  1. Michelangelo 70 ミケランジェロ70 (Astor Piazzolla) *
  2. Milonga del ángel 天使のミロンガ (Astor Piazzolla) *
  3. Asfalto アスファルト (Pablo Ziegler)
  4. Murga del amanecer 夜明けのムルガ (Pablo Ziegler)
  5. Muchacha de Boedo ボエドの娘 (Pablo Ziegler)
  6. La rayuela 石蹴り遊び (Pablo Ziegler)

【第二部】

  1. Milongueta ミロンゲータ (Pablo Ziegler) *
  2. La muerte del ángel 天使の死 (Astor Piazzolla)
  3. Introducción al ángel 天使への序奏 (Astor Piazzolla)
  4. Once again… milonga ミロンガをもう一度 (Pablo Ziegler)
  5. Fuga y misterio フーガと神秘 (Astor Piazzolla)

【アンコール】

  1. Libertango リベルタンゴ (Astor Piazzolla)

* ピアノ・デュオ

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