Un Mismo Cielo~時を紡ぐ 空の絆~ アルゼンチン・タンゴとフォルクローレの饗宴 Vol. 3 (2025/07/17 東京・渋谷区総合センター大和田 さくらホール)

ピアニスト宮沢由美が率いるタンゴ楽団、《トルカ・タンゴ・オルケスタ》はまだ結成1年半ほどの新しい楽団。以前からその存在は気になっていたのだが、先日ようやくコンサートに行くことができた。この日の公演は、タイトルにもあるようにタンゴとフォルクローレの饗宴。音楽だけでなくダンスも重要な要素であり、ダニエル・ウルキーシャによる構成・演出・振付が素晴らしかった。

タンゴに関して個人的に意外だったのが、第一部冒頭と第二部終盤にファビオ・ハーゲルの作品が演奏されたこと。ファビオ・ハーゲル自身の今年の来日公演は自作中心のプログラムだったが、彼の作品が日本の演奏家に取り上げられることはあまりなかったと思う (調べたところ、ダニエルの構成による舞台では過去にも例があった模様)。コンパクトな中にドラマ性をはらんだ楽曲はステージの要所にふさわしい。それ以外も古典から現代まで、有名曲からあまり知られていない曲まで、バラエティーに富んだ選曲が楽しい。演奏もプグリエーセ、ダリエンソ、トロイロ等のスタイルをベースにオリジナリティを加え、聴き応えがあった。また、ダンスのことはあまりよくわからない私でも今回のダンスの素晴らしさはよくわかった。通常のペアでのダンスに加え、ダニエルと佐藤洋介の男性二人によるダンスは切れ味鋭く見応えがあったし、ダニエルが木製の椅子と踊ったのもユーモラスでありつつ見事だった。

この日のもう一つの要素であるフォルクローレは、第一部後半と第二部9曲目で登場。こちらはナザレスにダニエルを加えた5人がダンスの中心で、抒情的、神秘的なダンスから激しい足さばき、ボンボ (太鼓) のバチさばきまで、目が離せない内容だった。演奏は曲によってバイオリンとピアノのデュオからオルケスタまで。

というわけで、演奏とダンス、タンゴとフォルクローレ、と幅広い要素を網羅し、非常に充実した内容のコンサートだったと思う。あとは、これに歌も入るとさらに魅力が広がると思うのだが。

Un Mismo Cielo~時を紡ぐ 空の絆~ アルゼンチン・タンゴとフォルクローレの饗宴 Vol. 3

日時:2025年7月17日 (木) 18:30~

場所:東京・渋谷区総合センター大和田 さくらホール

出演者:

曲目:

【第一部】

  1. Ausencia infinita 果てしない不在 (Fabio Hager)
  2. Sentimental y canyengue センチメンタルとカンジェンゲ (Víctor Felice, Leopoldo Federico)
  3. Este es el rey これぞ王様 (Manuel Caballero)
  4. Malambeao マランベアオ (Osvaldo Ruggiero)
  5. Desde el alma 魂から (M: Rosita Melo, L: Víctor Piuma Vélez, Homero Manzi)
  6. El chapucero エル・チャプセーロ (Carmen Castelletto)
  7. El Quebradeño エル・ケブラデーニョ
  8. La peregrinación 巡礼 (Ariel Ramírez)
  9. Zambita del que se va 旅立ちのサンバ (Hilda Herrera)
  10. La equívoca 過ち (Ariel Ramírez)
  11. Chacarera del violín バイオリンのチャカレーラ (Javier Zirpoli)

【第二部】

  1. Danzarín ダンサリン (Julián Plaza) – pf solo
  2. El choclo エル・チョクロ (Ángel Villoldo)
  3. Payadora パジャドーラ (Julián Plaza)
  4. La mariposa 蝶々 (M: Pedro Maffia, L: Celedonio Flores)
  5. Tanguera タンゲーラ (Mariano Mores)
  6. Celos ジェラシー (Jacob Gade)
  7. Patético 悲愴 (Jorge Caldara)
  8. Adiós nonino アディオス・ノニーノ (Astor Piazzolla)
  9. Malambo de bombos ボンボのマランボ
  10. Ojos en sombras 影の瞳 (Fabio Hager)
  11. La cumparsita ラ・クンパルシータ (Gerardo H. Matos Rodríguez)

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