FemmeFatale (2026/01/30 東京・北参道 GRAPES KITASANDO)
FemmeFatale (ファムファタル) は東京藝術大学楽理科の学生・卒業生によるバンド。メンバーのオリジナル楽曲とアルゼンチンタンゴを演奏する。そのライブに行ってきた。
実はほぼ予備知識なしだったので、藝大の人だから現代音楽的なアプローチがあったりするのかと勝手に想像していたのだが、良い意味で裏切られた。

(チラシ画像はオンラインより拝借)
オリジナルの楽曲はピアソラの影響も感じつつ、必ずしもタンゴではない要素も含めたオリジナリティが魅力的。幕開けの「vertmen-park」のタンゴにサーカスの猥雑さを加えた雰囲気は楽しく、第二部冒頭の「Etoile」ではポスト・ピアソラの文脈から離れた現代タンゴの形が見えた。「Georgette」はラヴェルのボレロのリズムとピアソラの3-3-2のリズムの交錯が面白い。
そして、特に第一部に集中的に演奏されたトラディショナルなタンゴ (20世紀初頭の古典タンゴから1950年代のタンゴまで) がとても良かった。中でも最も渋めな「ミロンゲーロ・ビエホ」が、ちゃんとディ・サルリの雰囲気を出していて一番印象に残った。このあたりは、既にプロのタンゴミュージシャンとして実績のあるバンドネオン奏者、鈴木崇朗の存在によるものが大きいのではないかと思う。第二部に演奏されたピアソラの楽曲も、タンゴとしての説得力が感じられる充実したものだった。
楽器編成は五重奏で、バンドネオン、ピアノ、バイオリン、キーボード (シンセサイザーと鍵盤ハーモニカ)、エレクトリックベースもしくはクラリネット。タンゴ的にはキーボードとエレクトリック・ベース (しかも5弦) の存在がユニークである。キーボードはピアソラ型の五重奏のギターを置き換える発想で導入したそうだが、もう少し違うアプローチにも活用できそうな気がする。エレクトリックベースは1970~80年代ぐらいの小編成タンゴ楽団で使われていたケースがあり、個人的にはちょっと懐かしい響きに感じられた。タンゴ独特のコントラバスのボウイングがもたらす粘りやグルーヴこそ得られないものの、研究のし甲斐がある楽器だと思う。ちなみにこれまではアコースティックのベースギターを使っていたそうだが、いずれにせよ今回の経験を踏まえて、ぜひFemmeFataleらしい響きを作っていってほしい。
バンドネオンの鈴木崇朗は上述の通りプロのタンゴミュージシャンだが、2021年コロナ禍を機に藝大に入学している。同年彼は、藝大で行われたピアソラ生誕100年記念のイベントに出演。それを観ていた同学年の安間誉和、悦木啓人、長谷川志樹の3人が感銘を受けて一緒に何かやろうと声をかけ、さらに一学年下の山本大地も誘って結成されたのがFemmeFataleなのだそうだ (参考:プラットニュース vol. 75 掲載の安間誉和インタビュー)。昨年鈴木、安間、悦木、長谷川は大学を卒業、山本もこの日のMCで無事卒論を提出できたと言っていたので、間もなく卒業する見込み。鈴木が持つ経験やタンゴらしさを他のメンバーが吸収し、一方で全員が同級生・同窓生である親密さも生かしながら、これからもますます魅力的な音楽を生み出してくれることを期待したい。
FemmeFatale
日時:2026年1月30日 (金)
場所:東京・北参道 GRAPES KITASANDO
出演者:FemmeFatale
曲目:
【第一部】
- vertmen-park (安間誉和)
- Danzarín (Julián Plaza)
- Nocturna (Julián Plaza)
- Romance de barrio (M: Aníbal Troilo, L: Homero Manzi)
- Milonguero viejo (M: Carlos Di Sarli, L: Enrique Carrera Sotelo)
- La cumparsita (Gerardo H. Matos Rodríguez)
- Nuage (悦木 A. 啓人)
- 雲 (悦木 A. 啓人) pf+bn
- 『常寂光寺の四季』より 春 (安間誉和)
【第二部】
- Etoile (悦木 A. 啓人) bn+vn
- Georgette (安間誉和)
- La muerte del ángel (Astor Piazzolla)
- Romance del diablo (Astor Piazzolla)
- Ophelia (安間誉和)
- Invierno porteño (Astor Piazzolla)
- Libertango (Astor Piazzolla)
【アンコール】
- park-grass (安間誉和)
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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