東京バンドネオン倶楽部 演奏会 (2025/08/31 東京・江古田 Live in BUDDY)
東京バンドネオン倶楽部は、タンゴに使われる蛇腹楽器バンドネオンのアマチュア演奏家団体。1994年の設立で、当初からバンドネオン奏者の小松亮太が指導にあたっている。1994年といえば小松がまだ21歳の時で、メジャーデビューの4年前。自身の活動の足場も定まっていたかどうか、という時期からバンドネオン奏者の裾野を広げることの大切さを認識し、実際の行動に移していた小松の先見性には頭が下がる。
その東京バンドネオン倶楽部が毎年行っている演奏会は、アマチュアだからこそできるマニアックな内容でいつも充実している…とわかったようなことを書くが、実はずいぶん前に聴いて以降、タイミングが合わなかったり告知を見逃していたりして久しく聴いていなかった。今年も9月6日のホール公演はチケットを取り損ねたものの、その一週間前の8月31日の午後に江古田のLive in BUDDYで行われた公演は運よく席を確保できた。
演奏時の編成はバンドネオン4、バイオリン4、コントラバス、ピアノという堂々たるオルケスタ・ティピカ。バンドネオンは曲ごとに倶楽部のメンバーが入れ替わりながら参加する一方で (一部の曲では小松も参加)、他の楽器はプロのミュージシャンが担当する。アマチュア演奏家にとってはこの上ない経験が積める素晴らしい機会である。

(席が右側壁際だったので見切れてしまったのは残念)
今年の演奏会は、一般には注目されることの少ない編曲者にスポットライトを当てた内容。第一部は日本人が編曲したタンゴで、フィーチャーされたのは昭和のタンゴブームの頃に活躍したミュージシャン、小松の父勝、小松本人、そしてこの日のピアノの熊田洋まで。印象に残ったのは昭和タンゴ人の一人、岩崎浤之 (ひろし) が倶楽部のために書き下ろした編曲による「シレンシオ」のモダンな響きと美しさ。第二部はアルゼンチンのミュージシャンによる編曲で、こちらではアニバル・トロイロ楽団の演奏で聴きなれているラウル・ガレーロ編曲の「緑のインク」が、改めて聴いてやはり良い編曲だな、と再認識。フアン・ホセ・モサリーニ編曲の「タキート・ミリタール」はかなりの難物で、アンコール2曲目という形で再トライするというオマケまで付いた。
率直に言って、俱楽部からの出演者の演奏に拙い部分もあったことは否めない (アマチュアとしては非常に高いレベルにあることは間違いないが)。一方で真剣さ、ひたむきさは共演するプロミュージシャンにも伝わり、オルケスタ全体の音も真剣でひたむきなものになっていたと思う。そういう音に触れる機会を、音楽を愛する者として今後も大事にしていきたい。
東京バンドネオン倶楽部 演奏会
日時:2025年8月31日 (日) 13:00~
場所:東京・江古田 Live in BUDDY
出演者:
- 東京バンドネオン倶楽部 (以下全員バンドネオン)
- 安達亮
- 遠藤由加里
- 大村美香子
- 下河原万紀子
- 芹沢悦子
- 田口加代子
- 田中祥子
- 寺戸典子
- 中山明子
- 野沢奈都
- 増田久恵
- 森岡敬
- 安間のり子
- 山本由利
- 小松亮太unit
曲目:
【第一部】
- Re Fa Si レ・ファ・シ (M: Enrique Delfino, arr: 林二郎)
- 行かないで (M: 玉置浩二, L: 松井五郎, arr: 小松亮太)
- Silencio シレンシオ (M: Carlos Gardel, Horacio Pettorossi, L: Alfredo Le Pera, Horacio Pettorossi, arr: 岩崎浤之)
- Don Juan ドン・フアン (M: Ernesto Ponzio, arr: 小松勝)
- Caminito カミニート (M: Juan de Dios Filiberto, L: Gabino Coria Peñaloza, arr: 小松勝) *
- La silueta 影法師 (M: 平吉毅州, arr: 平吉毅州)
- Lo que vendrá 来るべきもの (M: Astor Piazzolla, arr: 熊田洋)
- El llorón 泣き虫 (M: Juan Maglio, Ambrosio Radrizzani, L: Enrique Cadícamo, arr: 熊田洋)
- 薔薇は美しく散る (M: 馬飼野康二, L: 山上路夫, arr: 小松亮太)
【第二部】
- Boedo ボエド (M: Julio De Caro, L: Dante A. Linyera, arr: Roberto Pansera)
- Adiós Nonino アディオス・ノニーノ (M: Astor Piazzolla, arr: Luis Stazo)
- El choclo エル・チョクロ (M: Ángel Villoldo, arr: Néstor Marconi)
- Tinta verde 緑のインク (M: Agustín Bardi, arr: Raúl Garello)
- Milonga triste 悲しいミロンガ (M: Sebastián Piana, L: Homero Manzi, arr: Víctor Lavallén)
- Payma パイマ (M: Roberto Alvarez, arr: Roberto Alvarez, Juan Carlos Zunini)
- Taquito militar 軍靴の響き(M: Mariano Mores, L: Dante Gilardoni, arr: Juan José Mosalini)
- Decarísimo デカリシモ (M: Astor Piazzolla, arr: Osvaldo Montes)
【アンコール】
- Canaro en París パリのカナロ (M: Juan Caldarella, Alejandro Scarpino, L: José Scarpino, arr: Julian Plaza, José Libertella)
- Taquito militar 軍靴の響き (M: Mariano Mores, L: Dante Gilardoni, arr: Juan José Mosalini)
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
商品へのリンクには以下のアフィリエイトが設定されている場合があります。
Amazon.co.jpアソシエイト
楽天アフィリエイト