心とは?体とは?~カノン(中原清一郎)

高校の先輩に当たる中原清一郎氏の長編。
末期癌で死を待つばかりの58歳の男、寒河江北斗と、記憶障害で自分の記憶が消えていくのを待つばかりの32歳の女、氷坂歌音(カノン)。男は生き延びるために、女は愛する我が子のために、それぞれの心と体を入れ替える選択をする…。
人の記憶を司る海馬を手術によって入れ替える「脳間海馬移植」が実用化された近未来を描いた小説。といっても設定は約10年後。医学の進歩以外に関して極端なSF的設定があるわけではない。我々の生きる時代から地続きの世界において、心と体の入れ替わりは人に何をもたらすのかを描いた作品である。
個人的には読み始めてすぐ、海馬を入れ替えることでそのまま人格が入れ替わるのか?というような疑問も湧いてきたのだが、ある程度納得行く形でそれにも答えている(医学的に正しい認識なのかは不明)。生きるとはどういうことか、心とは?体とは?自分とは?親子とは?など、読んでいてさまざまな想いが掻き立てられる。ユーモラスな描写もあれば緊迫感溢れる展開もあり、ところどころほろりとさせつつ読後感は爽やか。結構な分量の長編ながら一気に読み切ってしまった。
カノン(中原清一郎) 河出書房新社 | 文学・小説 > 小説 > な行(著者) | Reader™ Store – ソニーの電子書籍ストア

カノン(中原 清一郎)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です