超直前情報!『ブエノスアイレスのマリア』

アストル・ピアソラとオラシオ・フェレールによるオペリータ(小オペラ)『ブエノスアイレスのマリア』の公演がいよいよ目前に迫って来た(2013年6月29日、東京オペラシティにて)。いや目前というか明日だし。
1968年に発表された『ブエノスアイレスのマリア』は、ピアソラにとっては1965、6年ごろからの作曲面でのスランプを脱出する契機となった作品である。きっかけとなったのは、オラシオ・フェレールが持ち込んだ詩の草稿。そこから2人の共同作業によりこの大作が生まれ、今もピアソラの生涯における金字塔といわれる作品となったのであった。
しかしながらこの作品、構成している各曲は必ずしも有名ではなく(有名なのは「フーガと神秘」と、近年新しい歌詞で「私はマリア」としても知られる「受胎告知のミロンガ」ぐらいか)、また詩も全編にわたってシュールで難解。いきなり聴いても面食らって終わるのではないか、という心配がある。そこで公演を観る上での予備知識的なものを書けないか、と思ったのだが、こんな限られた時間に私が書けるような内容ではない…と、小松亮太自身が渾身の解説を書いているではないか!というわけで、私が下手なことを書くよりぜひそちらを読んでいただきたく、ここにご紹介しようと思う。

ぜひ総論だけでも読んでいただきたい。果たしてここに書かれているのが正解かどうかはわからないが、一つの解釈として興味深いものがある。加えて、1960年代後半といえばタンゴはロックンロールなどの外来音楽に押されて死にかけていた時期であり、そのタンゴの命運を、救いがないようでありつつ輪廻と未来を感じさせるような物語に重ねているようにも私には思える。
今回の公演、演奏は小松亮太率いるTokyo Tango Dectet。歌手にはピアソラ=フェレールの本作オリジナルキャストであるアメリータ・バルタールと、昨年(2012年)にやはり小松亮太が演奏したピアソラ=ボルヘスの『エル・タンゴ』にも参加していたレオナルド・グラナドス、そして語りに現代のタンゴ界のスター歌手であるギジェルモ・フェルナンデスを迎えるという豪華キャストである。ご存知の方も多いと思うが、実は2011年3月にレオナルド・グラナドス以外は別のキャストを迎えて公演が行われる予定だったが、あの不幸な震災で中止となってしまった。公演予定日直前、極限状態の中リハーサルを行った時から2年余りの歳月の重みが、演奏内容にどんな深みを与えるだろうか。
上記の記事にもしつこく書かれていたが、本公演の直前となる6月24日、江古田Buddyではオール日本人キャストによる『ブエノスアイレスのマリア』の公演があった。歌手にSayaca、KaZZma、語りに片岡正二郎を迎えたこちらの内容もとても素晴らしいものだった。オペラシティでの公演にも否が応にも期待が高まる。

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