人種とスポーツ – 黒人は本当に「速く」「強い」のか (川島浩平・著)

ゴールデンウィーク読書作戦第二弾。これはちょうど1年ほど前、2012年5月に刊行された本である。
人種とスポーツ – 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書)
現在の日本で「黒人の身体能力は生まれつき優れている」という考え方を否定する人は多くないだろう。オリンピックの陸上競技やNBAでの黒人選手の活躍を見るにつけ(オリンピック男子100メートル決勝は、ここ30年黒人のみによって争われているのだそうだ)、その差が生まれつきであることにはもはや自明の事実のように思えてくる。しかし、奴隷時代からほんの百年ほど前までは、米国を中心に、黒人は身体的に劣った人種だ、という考え方が支配的だったという。それが、黒人のスポーツへの参加の機会が開かれるに従い、今度はその素晴らしいパフォーマンスから、いつしか黒人の身体能力が生まれつきのもの、という考え方に変わっていったのだそうだ。
この本は、主にアメリカにおいての、黒人のスポーツ界への進出と身体能力に関する言説の変遷の歴史をたどり、さらに冒頭述べた考えについて批判的に検証を行う。スポーツの能力に影響する社会、文化などの要因を考察し、そもそも黒人とひとくくりにされている人種が実は極めて多様性に富んだ人々の集まりであることも明らかにすることで、「生まれつきの身体能力」という考え方を解体して行く。
自分がずいぶんと思い込みに支配されていたことに気付かされる。だからと言って「目からウロコ」というようなスパっと割り切れる答えが示されるわけではない。人種にまつわるような問題に対する多面的な考察が重要であることを改めて強く感じた。

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