オンバク・ヒタム / 齋藤徹 (2009年9月16日 東京・高円寺 座・高円寺2)

ものすごいものを観聴きしてしまった。コントラバスの齋藤徹さんによる、「オンバク・ヒタム(もう一つの黒潮)」と題されたコンサート。
「OMBAK HITAM」はマレー語で黒潮を意味する言葉だが、プログラムによれば

親潮となって四国、紀伊半島を流れる黒潮とは別に、インドネシアに始まり、琉球弧を通った後、九州の西に別れ、朝鮮半島に流れ、日本列島の日本海側へ、最後には稚内へとたどり着く「もう一つの黒潮」の文化圏を想像しました。

とのことである。5月と7月に行われた「徹の部屋」(5月は聴きに行った)でも取り上げた「オンバク・ヒタム」の集大成となるこの日のライブ、演奏は徹さんを含むコントラバストリオ・ヒツジ、筝カルテット・螺鈿隊、それにダンスの田中泯さんという大所帯で、とにかくすばらしかった。
何がどうすばらしいのか、多くの人に伝えたいのだが、どう言葉にして良いのかわからない。「すばらしい」と書くこと自体安易に思えてしまって、まして「○○を思わせる音」とか「○○なリズム」とか、何かに例えてしまうとその瞬間に違うものになってしまいそう。
それでもあえて書けば、動と静、統制と混沌の対比が見事だった。メンバー全員が完全に一体になったアンサンブルから、あえてそれを壊すような即興の応酬が始まり、そして混沌の中から次のアンサンブルの糸口が提示される…曲間なしで1時間以上もの演奏だったが、終わって欲しくない、このままずっと続いて欲しい時間だった。
あー、やっぱり全然伝わりそうにない。書き手としての限界を痛感してしまう。でもいいや。とにかくあの場に居あわせることができただけで幸せだ。

[Posted on 2009-09-17]

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