東京大学のアルバート・アイラー / 菊地成孔、大谷能生

下記[2005-09-25-1]の続編。東大教養学部のゼミで行われたジャズ史の講義録である。『憂鬱と官能を教えた学校』ともどもかなり売れている模様。

 この講義の正式なタイトルは (黒板に書かれた講義名を振り返りながら)、『十二音平均律→バークリー・メソッド→MIDIを経由する近・現代商業音楽史』、となっています。なんか難しそうですね。難しそう?(笑) まあ、これは、この講義の登録の打ち合わせをしている最中にですね、急に田口 (寛之) 君に書類を渡されて、「講義のタイトルを今決めてください」って言われたんで、その場で適当につけたお題目で (笑)。
 実際に授業でやることは多分、もっぱら「ジャズ」について。二〇世紀に生まれて、二〇世紀と共に育ってきたジャズという音楽の歴史と構造についてですね、いろいろと音源を聴きながら学んでいくことになると思います。
(pp.10〜11)

『憂鬱と官能を教えた学校』が、実際にキーボードを持ち込んで実学的な内容も講義したものの記録であるのに対し、こちらは実学を排してジャズ史に専念した講義の記録。相手が東大の教養学部生であるので、音楽の専門知識を持たないことを前提としており、当然読む側もそのような知識がなくても問題ない内容になっている。
ちゃんとジャズを体系立てて聴いてこなかった私にとっては、とにかく教えられることばかり。例えば1950年代のビ・バップの成立から60年代のモード・ジャズへの流れなど、なるほどー、と唸ることしきりである。しかも、かなり深いジャズ・ファンの友人がやはりこの本に感動したと言っていたので、詳しい人にとっても新鮮な視点が示されていると言っていいだろう。
例えばモードの成立の部分でジェームス・ブラウンのファンクとの絡みに言及するなど、『憂鬱と官能を教えた学校』と同様の視野の広さと相対化がポイントか。

  • 東京大学のアルバート・アイラー〜東大ジャズ講義録・歴史編
  • 菊地成孔、大谷能生
  • メディア総合研究所
  • ISBN 4-944124-19-8

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