12月11日はタンゴの日〜フリオ・デ・カロ編

カルロス・ガルデル編に続いてフリオ・デ・カロ編。
デ・カロは1899年12月11日生まれのヴァイオリン奏者、作・編曲家、楽団指揮者。彼の功績は何といっても、現代につながるタンゴ楽団のアンサンブルの基礎を作ったことにある。より詳しく言えば、バンドネオンx2、ヴァイオリンx2、ピアノ、コントラバス、という六重奏の編成を確立し、そこに高度な音楽的知識に基づく編曲の概念を持ち込んだのである。このあたり、詳しくは、たとえば斎藤充正さんのサイトtangodelic!にある「タンゴ入門講座」「タンゴの楽団編成(1) 「オルケスタ・ティピカ」その1」を読んでいただきたい。
せっかくなので、デ・カロ以前の音楽との比較を行いたかったのだが、デ・カロが六重奏団を作ったのが1924年、まだ電気録音すら行われていなかった時期であるため、YouTube上にはちょうど良いサンプルがない。とりあえず、古典タンゴの大巨匠ロベルト・フィルポが1930年代以降に古いタンゴのスタイルを擬似的に再現した四重奏による「エル・チョクロ」を置いておく。

演奏技術は高度ながら、リズムのノリは古いタンゴのスタイルに近い。もちろんこれはこれで素晴らしい演奏なので念のため。
一方、デ・カロの六重奏団は、例えばオスバルド・プグリエーセの初期の作品「想い出」だとこんな感じ。1927年録音。

曲も違うので単純比較はできないが、微妙な揺れと粘りを感じるリズムと豊かな響きなど、フィルポの演奏とはかなり違う。このあと、この曲の作曲者のオスバルド・プグリエーセや、アニバル・トロイロ、さらにはアストル・ピアソラに至るまでのタンゴ表現の原点となったスタイルである。
デ・カロの作ったタンゴも非常に多い。下町情緒をたたえた美しいメロディーは今でも多くのアーティストに取り上げられている。そんな中から「マラ・フンタ(悪い仲間)」。

デ・カロが当時良く使っていた楽器に、コルネット・ヴァイオリンがある。ヴァイオリンの音量を補うため、胴にラッパをつけたものである。これを弾くデ・カロの映像があった。フアン・カルロス・コビアン作「ノスタルヒアス(郷愁)」。最初と最後に一瞬映るのは晩年のご本人。

デ・カロの楽団のピアニストはいつもフリオの兄フランシスコ・デ・カロ。彼の作るタンゴは極めてロマンチックで幻想的だ。デ・カロが引退する直前の1950年代の録音から「ロカ・ボエミア」と「黒い花」。

最後に、同じく1950年代の録音から「我が悩み」。

以上、現代につながるタンゴの祖、タンゴ界の一大潮流の源であるフリオ・デ・カロの音楽をYouTubeから拾ってみた。
ちなみに下記のCDは、私は持っていないのだが、1924年〜28年ということなので、最も初期のデ・カロ六重奏団の演奏が収められている。

Todo Corazon 1924-28(Julio De Caro)

一方こちらは1950年代の最後の楽団による録音。上記の「ロカ・ボエミア」「黒い花」「我が悩み」も収録。絶品です。

Tangos De Rompe Y Raja(Julio De Caro)

[Posted on 2010-12-11]

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