小松亮太とタンゴへ行こう(小松亮太・著)

小松亮太初の書き下ろしタンゴ本。タンゴに興味がある人ならぜひ読んでいただきたい。特に、ピアソラや小松亮太は聴いたことあるけど他のタンゴは何を聴いていいかわからない、とか、タンゴダンスを楽しんでいるので曲や演奏についてもっと知りたい、というような方、あるいはタンゴを演奏してみたいと思っている方におすすめ。
タンゴを楽しむ上で最も重要な要素の一つであるアレンジ(編曲)について、しっかりとスペースを割いて解説しているのが良い。といっても、音楽理論などの難しい話に入るのではなく、あくまで聴くためのガイドとして、どんなところに注意して聞くと面白いのか、というような観点からの解説になっている。

ですから、もしタンゴのCDを何枚かまとめて買うのであれば、「せっかく買うのならなるべく曲がダブらないように買おう」なんて思わないで、むしろなるべく曲が「ダブるように」買ってほしい。そして、違うアーティストによる同じ曲を何種類も聴いて味わってみてください。「あれ、こんな始まり方するの?」とか、「こんなコード進行にしちゃうの?」という楽しみが出てくればしめたもの。

(p. 38 第二章 タンゴの楽しみ方 タンゴ・アレンジ万華鏡)
私も含め、タンゴファンはそれなりに長い時間をかけて、結果としてこういう楽しみ方をしてきたはずだが、入門者にはっきりこういうアドバイスをするということは案外されていなかったように思う。言われてみればその通り、なのである。
その後続く、何人かのアーティストについてのガイドも良い。あくまで聴く人の立場での、ポイントを押さえた解説になっている。その分、当然ながら主観が入るので、人によっては賛同できない部分があったりもするかもしれないが(ダリエンソの評価の一部など…個人的にはえらく納得したけど)、賛否の起きない文なんてどうせつまんない訳で、これでいいのだ、と思う。
巻末にはきちんと編曲された「ラ・クンパルシータ」の譜面までついている。これも新しい試み。譜面の読める人は、よりいっそう楽しめるだろう。

小松亮太とタンゴへ行こう(小松 亮太)

[Posted on 2009-10-04]

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