石川浩司さん

悲しいお知らせ。タンゴ評論家として活躍されていた石川浩司さんが亡くなった。6月23日0時01分だったそうだ。石川さんのホームページの掲示板にご令嬢の千夏子さんからの書き込みがあるので、詳しくはそちらをご参照いただきたい。


中高生のころ(1980年前後)、小遣いをためて買ったタンゴのLPの解説でお名前を知ったのが私と石川さんの出会いである。オスバルド・プグリエーセの『現代タンゴの最高峰』『サンテルモの夜』など、石川さんの書かれた解説を隅から隅まで読みながら聴き込んだものだ。
それから何年も経って、たぶん1996年ごろだと思うのだが、パソコン通信のニフティ・サーブでタンゴを扱っているフォーラムに入ったところ、そこにいらっしゃったのが石川さんだった(他にも斎藤充正さんや西村秀人さんなど、気鋭のライターやミュージシャンの方々が出入りしていたすごいフォーラムだった)。若輩者の私の書き込みにもレスを下さり、ほどなくライブ会場でも気軽に声をかけていただくようになった。日本タンゴ・アカデミーの機関紙への執筆の機会を与えてくださるなど、何かと気にかけていただいたのが何ともありがたかった。
最近は私自身がライブにあまり足を運ばなくなったのと、石川さんも体調を崩されていたので、お会いする機会がずいぶん減ってしまっていた。昨年(2008年)12月のタンゴアカデミーのセミナーで、帰路をご一緒していろいろお話を伺ったのが最後になってしまった。その後はラティーナのディスコ・ガイドを書かれているのを見て、お元気のようで何より、と思っていたのだが…(昨日届いた最新号にも石川さんのディスコ・ガイドが載っているではないか!)。
石川さんが日本のタンゴ界に遺したものは計り知れない。中でも、編者として全体をまとめられた『タンゴ名曲事典』(1998年、中南米音楽)、石川さん単独の著作『タンゴの歴史』(2001年、青土社)は今後も読み継がれるべき名著だと思う。前者は894曲ものタンゴの楽曲を解説した、ほかに類を見ない事典であり、また後者はご本業の経済アナリストとしての視点も交えての、社会・経済情勢との関係の中で語られるタンゴ史である。
これを書きながら斎藤充正さんのブログを見たら、やはり斎藤さんも石川さんの訃報について書かれていた。記事の中で雑誌『アンボス・ムンドス』に石川さんが寄せたロビーラに関する文章が引用されているが、これは私も今回の訃報に接して真っ先に思い浮かべたものだ。ぜひご一読いただきたい。
…それにしても、ショックである。文章でも口頭でも端正な語り口、柔和な笑顔が忘れられない。ご冥福をお祈りします。

タンゴの歴史(石川 浩司)

『タンゴ名曲事典』は中南米音楽社のMPB-storeにて買える可能性あり
『アンボス・ムンドス』4号はアオラ・コーポレーションのEl Arulloにて買える可能性あり
[Posted on 2009-06-24]

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