小松亮太 / The Piazzolla Best

日本タンゴ・アカデミーによる2008年12月7日のタンゴ・セミナーで紹介したCDの最後は小松亮太のピアソラ作品集。

小松亮太ピアソラ・ベスト(小松亮太/チャーリー・コーセイ/フェルナンド・スアレス・パス/オラシオ・マルビチーノ/パブロ・シーグレル/エクトル・コンソーレ)

1998年のメジャー・デビュー以来10年間の彼の活動を、ピアソラを軸に振り返ることの出来る好企画である。「ベスト盤」ということで、既存のCDからのトラックが中心だが、未発表のライブ音源や本アルバムのための録りおろしも含まれている。中でも目玉は、ピアソラが1970年代に編成していた九重奏団のために編曲した「アディオス・ノニーノ」。残念ながらピアソラは録音に至らなかった(したがって他にも全く録音のない)この譜面を、今回新たに録音したのである。冒頭の緊張感から一気に高みへと駆け上がる展開は何度聞いても鳥肌モノだ。小松自身ライナーで

恐らくピアソラが、当時のプログレっぽいサウンドに傾倒していた頃(1970年代初頭)に結成した「コンフント9(ヌエベ)」という9人組のために書いた編曲なので、なくなったお父さんに捧げた曲にしてはとっつきにくい雰囲気が無くもない。

と書いている通り、広い共感は得られないかもしれないが、少なくともプログレ系のロックが好きな人にはたまらないトラックだろう。
元ピアソラ五重奏団のメンバーを招いて行われた1998年のデビュー・ライブからのトラックも貴重。他にもその折々での小松亮太とピアソラの向き合い方をたどることができる。さらには、以前からの小松亮太のリスナーであれば、自分自身と小松亮太、自分自身とピアソラの向き合い方をこのアルバムで振り返ってみることもできる。
ところでセミナーでは、オルケスタ・ティピカによる2002年のライブ録音「ビジェギータ」をかけた。彼の10年間の功績の中でも、後進の育成は最も重要なものの一つであると私は思っている。その一つの成果であるオルケスタ・ティピカでの活動に敬意を表したかったのだ。
[Posted on 2008-12-30]

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